【京大臨床統計家育成コース①】大学院に合格しました

 2021年9月10日(金)、京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 臨床統計家育成コース(2年制専門職学位課程)に合格しました。本コースは、現在日本で不足している臨床統計家(医療統計家、医学統計家、生物統計家)を育成し、日本の臨床研究の質を向上させる目的で設立されたコースです。今後は統計学という観点から、医療に貢献していきたいと思います。

臨床統計家育成コースのロゴ


 勉強を開始した5月頭から8月25日(水)、26日(木)の入試まで、4か月弱しかありませんでしたが、なんとか合格までたどり着けました。実験科学を主とする現在の所属大学院とは分野も異なる大学院に進路を変更するという、5月からの無謀な挑戦でしたが、一歩ずつ自分の足で踏みしめてくることができていたみたいです。この決断を許し、試験勉強中も励ましてくれた両親に感謝します。また学部時代の指導教員現在の指導教員から多くの助言をいただきました。そして大学時代の友人、アルバイト先の皆様からあたたかく応援していただきました。誠にありがとうございました。試験勉強中の4か月弱には、アルバイトを開始したり、論文投稿を繰り返したり、母方の祖父が亡くなったり、新型コロナワクチン接種を受けたりといろいろありましたが、時間がない分集中して試験勉強に取り組めたのかなとも思います。


 5月時点では、統計学も疫学も深く勉強したことはない状態でした。さらに社会健康医学系専攻の入試は、疫学と関連して健康情報学や質問紙調査法、その他には医療倫理・研究倫理や知的財産など、社会健康医学系専攻の複数の研究室の分野から出題されます。私は臨床統計家育成コースの専用問題1問と疫学関連分野2問を解答しようと決めていました。相性の悪い問題が出題されたときのために、念のため医療倫理・研究倫理と知的財産についても簡単に学修しました。このような対策を講じることができたのは、社会健康医学系専攻の過去問とナカドマリタカシさんによるウェブサイトのおかげです。この場を借りて御礼を申し上げます。入試当日は専用問題には十分解答しきれませんでした。残りの2問については、疫学関連の問題の相性が良さそうだったので、それらに自信をもって解答することができました。なお英語については昨年の大学院入試で用いた、TOEFL iBT Home Editionの結果を事前提出しました(良い点数ではありませんでした)。また研究計画書(志望理由書の一部)については、学部の卒業研究の課題として浮き彫りとなった内容を記しました(文献を引用しつつ詳細に記しました)。


 以下に社会健康医学系専攻対策として用いた書籍を列挙します。私にとって大変有意義であった書籍を太字にしています(その中でも感動した書籍には下線を付しています)。そうはいってもやはり、社会健康医学系専攻の過去問が試験勉強の正しい方向性を示してくれたことを強調しておきます。

〇統計学

・日本統計学会 編『統計検定2級 公式問題集 2017~2019年』(実務教育出版)

村上正康・安田正實 共著『統計学演習』(培風館)

〇疫学関連

佐藤俊哉 著『宇宙怪人しまりす 医療統計を学ぶ』(岩波書店)

佐藤俊哉 著『宇宙怪人しまりす 医療統計を学ぶ 検定の巻』(岩波書店)

・鈴木淳子 著『質問紙デザインの技法 [第2版]』(ナカニシヤ出版)

椿広計・藤田利治・佐藤俊哉 共編『これからの臨床試験 医薬品の科学的評価ー原理と方法』(朝倉書店)

中山健夫 著『健康・医療の情報を読み解く 健康情報学への招待 [第2版]』(丸善出版)

・日本疫学会 監修『はじめて学ぶ やさしい疫学 改訂第3版』(南江堂)

・Kenneth J. Rothman 著(監訳:矢野栄二・橋本英樹・大脇和浩)『ロスマンの疫学 科学的思考への誘い 第2版』(篠原出版新社)

〇医療倫理・研究倫理

・赤林朗 編『〔改訂版〕入門・医療倫理Ⅰ』(勁草書房)

〇知的財産

・松田俊治・牧野知彦・宮原正志・山本秀策 共著『研究者のための知的財産ハンドブック』(化学同人)


 今年度の入試は新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、8月25日(水)が自宅での筆記試験、26日(木)がオンラインによる口頭試問でした。いわゆるHSP (Highly Sensitive Person) の私にとって、自宅受験であったことは合格の大きな要因だったかもしれませんし、昨年、現在所属している大学院のオンライン入試を経験していたことが活きたのかもしれません。しかし1日目の専用問題では、統計の問題に歯が立たなかったし、2日目の口頭試問では、あるテーマについて簡単なプレゼンテーションを求められましたが、論理性に欠く論点が不明なプレゼンテーションをしてしまいました。したがって落ちてしまった...と思って合格発表の日を迎えました。自分の受験番号を見つけた時、奇跡が起こったと思いました。


 私が大学院を修了する予定の2024年、父は還暦の年を迎えます。家族にも心配をかけないように、今後はこれ以上進路に迷ってはいけないと感じています。合格をいただいた臨床統計学の分野で、医療に貢献できるように、学修と研究に邁進する所存です。大学院を変更して良かったと思えるように、これからの毎日を大切にしていきます。


 本記事がどなたかの役に立てば嬉しいです。


------------------追記------------------

 2021年10月6日(水)、大変ありがたいことに、大学院生給与奨学金マスター21公益財団法人吉田育英会様)の受給が再度認められました。私の勝手な都合で、大学院ならびに研究分野を変更したにもかかわらず、高配の措置を講じてくださった吉田育英会様に厚く御礼申し上げます。来年度、再来年度こそ、本奨学生にふさわしい成果を残すことができるように、学修と研究に邁進する所存です。



騎西健太 #17